専門店の矜持

思いがけないコロナ過に見舞われる前は、メーカー主催全国販売店総会が、東京、大阪で毎年数回実施されていました。

ある総会の帰りの新幹線で、近隣でも名の通った創業100年を超す寝具店の、旧知の社長と同席することになりました。

当日行われた会の会長も務める社長と、たわいもない雑談の後、突然

「児玉君は〇〇の羽毛布団は扱わないのか?」

と、ある地方のメーカー名をあげて尋ねられました。

「あそこの羽毛ふとんを扱うと、今までお客様に説明してきたことがウソになりますから、一切扱う気はありません。」と、答えると、

「君ならそうだろうな。実はうちの店でも先日、購入したお客さんから追加一枚注文受けて、追加で仕入れた品が、同じ柄で仕様も同じ品番なのに、厚みも見栄えも全然違う羽毛布団で、納品にすごく気を使ったよ。」と、大笑い。

そのあと、続いて、

「でも、あそこの品を扱わないと儲からないからな!」

中身の分からない商品を選ぶのに、お客様はその店の歴史を信頼して購入している筈。代々築いた信用を儲けに替えているのか?

中身の分かりにくい布団を扱う、寝具専門店の矜持を一番大切と思う自分が、世の中から浮いてる虚しさを感じた瞬間でした。